第1章 私の進む道
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私には、2人の幼なじみがいた。
中学生の頃に両親を事故で亡くし、身よりもなかった私をお隣で仲良くしていた和泉家のご両親が私を引き取ってくれた。
幼なじみでもあり、兄弟のように育った私たち3人は、特段気にすることも無く、自然に『家族』に慣れていった。
オレンジ色の髪をして、その髪の色に負けないぐらい、キラキラの笑顔でいつも私を褒めてくれた同い年の彼と。
私よりも随分と年下なのに、大人よりも大人で、全てのことがパーフェクトにこなせる年下の子。
私が大学進学をしたと同時に、和泉家から離れた。
いつまでもお世話になることはしたくもなくて、感謝してもしきれないぐらいのたくさんのことを教わった。だから名残惜しくて今でもたまに、おばさんのところに行っては娘のようにしてくれてお話を聞いてくれる。
大学はこの地域では結構有名な私立大学に入った。首席の地位を貰えればお金はほぼかからずに済んだことも魅力的だ。それだけでも一人暮らしの私だから、とても助かる。自分の頭を褒めてやりたかった。
本当なら、あのオレンジ色の髪をした彼に真っ先に報告して、真っ先に頭を撫でてもらいたかった。
だけど、彼は彼なりに自分の夢…(アイドルになる)という夢のために、大きな壁にぶち当たっていた時期で声もかけづらくもなってきた頃だったので、敢えて言わなかった。
オーディションから帰ってきた彼は、トイレで1人で泣いていた。そんなのを見ちゃったら、自分を褒めてほしいなんて言えなかった。むしろ今でも、この時に何故彼のそばにいてあげなかったんだろうと、後悔している。
そんなこともあって、ドンドン連絡も取れなくなり、私も分野が法律学という、専門的な分野に入ったが故に忙しくなり、連絡はそのまま途絶えてしまった。
今でも、会いたくて会いたくてたまらない。
これが恋だと気づいたの、疎遠になってからという、なんとも遅い初恋だ。
そして初恋は実らないという現実も正しかったのだ。
『なんで今更、こんなこと思い出すんだろう…』
もうあれから、2年半が過ぎていた。
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