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LOVE*CHOCO*KISS‼︎ 〜HQバレンタイン企画〜

第8章  《茂庭》恋の始まりはすれ違いから



「……寒い……」

20分くらい待っただろうか。
じっと外で待つには、今日の気温は低すぎた。

頼みの綱のホッカイロも、少しずつ元気をなくしてしまっていて、シャカシャカと鉄粉の擦れる音だけがむなしく聞こえてくる。

体育館からは元気のいい掛け声が聞こえていて、練習が終わる気配はない。

休憩もまだなのか、外に出てくる人もいない。

……寒空の中いるから、トイレに行きたくなってきた。

「ダッシュで戻れば大丈夫だよね」

自分に言い聞かせるように呟いて、トイレまで走った。


******

「お、小鳥遊どうした? なんか用事か?」

トイレから出ると、大きな荷物を抱えた副担とばったり出会った。

「あー…まぁ……」

なんとなく気恥しくて、曖昧に答えると、副担は興味なさそうに「ふぅん」とだけ答えた。

「なんでもいいや。暇ならちょっと手伝え」
「えっ、いや、私」
「最後に孝行してから卒業しろ」
「えーっ」

副担は荷物を半分こちらに寄越すと、こっちこっちとだけ言ってスタスタと歩き出してしまった。

ちょっと待って、私は今から大事な用事が……
一世一代の、人生をかけた大事な……

呼び止めようにも副担の足は速く、すでに階段を登ろうとしている。

仕方ない。
さっと運んで戻ってくれば間に合うはず。

チラと見やった体育館からは、いまだ人が出てくる気配はなさそうだ。

荷物を抱えながら、副担の後を小走りで追った。



**********

「何がちょっと手伝えよ……」

副担は荷物を運んだだけでは満足してくれなかったらしく、荷物の整理まで私に頼んでどこかへ行ってしまった。

幸いなことに、今いる資料室からは体育館の入り口が見える。

荷物を指定の場所に整理しながら、私は時折窓の外へ目をやった。

茂庭くんが出てきたら、ここを飛び出して彼を捕まえなければ。
出来たら一人の時を見計らって渡したいけど、あんまり贅沢なこと言ってられない。

そんなことを考えながら、荷物の整理をほぼ終えかけた時、体育館の扉が開くのが見えた。

扉から、鎌先くんと笹谷くんが出てきた。

「ヤバい、早くしなきゃ!」

手に持っていた最後の一つを棚に放り込んで、資料室から飛び出した。

足早に階段を駆け下りて、体育館に通じる通路に飛び出すと、そこにいた人にぶつかってしまった。

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