第3章 想起1
飛影は妹を探すため人間界にいた。
その中で怪我を負ってしまい木の下で蹲る。
一人の少女が走り寄ってきた。
「大丈夫?痛いの?」
飛影は驚いて少女の方を見る。
しかし何も言わない。
「誰か呼んでこようか?私、絆創膏ならあるよ」
ポケットから絆創膏をだそうとする。
「…いらん」
「だめだよバイ菌が広がっちゃう」
「そんな柔じゃない………。っ!?」
飛影は気を失ってしまう。
ブラックアウトしていく視界。
目を開けると柔らかいベットの上にいた。
温かい甘い匂いがする。
上体を起こすとさっきの少女が台所で何かしている。
そして起きた飛影に気が付く。
「あ、起きた?良かった~!ココア作ったの、いる?」
唖然としていた。
生まれた時から愛情を受けてこなかった飛影には少女の行動が理解できなかった。いつの間にか怪我も処置してある。
蔵馬に昔、手当はしてもらったことはあった。
目の前にいる少女は蔵馬と同じただ甘い人間なのだろうか。
そんなことを思う飛影と裏腹に笑顔で湯気を蒸かすココアの入ったコップを差し出してくる少女。
「美味しいよ…たぶん…人にココア入れるのはすごく久しぶりだからあまり自信なくて…」
飛影は黙って受け取りココアを口にする。
甘く心まで満たされる感じに少し戸惑う。
「どう…かな?」
少女は飛影の顔をじっとみて感想を求める。
「…甘い」
「甘いの嫌い?」
「そんなこと…ない」
「よかった!今ご飯も作ってるから待っててね」
「…」
そういえば空腹で倒れたことを忘れていた飛影だった。
そして気付く持っていたものが無いと慌てて周りを見渡す。
「もしかしてこれ?ビデオみたいだけど…」
「!」
少女の手にはコエンマから幽助に渡すようにと預かったビデオだった。
「ビデオ見たいの?」
飛影は黙って頷く。
「いいよ、見よう」
ひとまずご飯の支度を終わらせた少女はビデオをビデオデッキにセットして再生ボタンを押した。
それには誰かに幽閉されている着物をきた女の子が映っていた。
「可哀想…」
少女が呟く。その隣で飛影はグッと拳を握っていた。
最後まで見ると飛影は今にもここから飛び出そうとしていた。