第24章 若月と小狐
三日月よりも、少しだけ欠けた月。
それでもやっぱり、月は綺麗だ。
小さくなっても確かに本丸を、此処に居る私達を照らしてくれている。
主「はあ…まだ熱い…」
頬を両手で挟む様に触れてみれば、秋の夜の冷たい風に負けない位…それほど私の頬は熱を持っていた。
審神者になって三日、此処まで刀剣男子にからかわれるとは思ってもみなかった。
主「しかもあんなに小さい薬研にまでぇぇ…」
やはり小さいとはいえ、歴史ある刀という事なのか…。
溜め息を吐いていると、ふと足音が近付いて来た。
小狐丸「ぬし様、此処にお出ででしたか」
主「あ、小狐丸」
銀色の髪を夜風に靡かせ月の光に照らされたその姿は、何とも幻想的に見えた。
主「小狐丸、出て来ちゃって良いの?」
小狐丸「ええ、少し酔ってしまいまして…酔い醒ましに風に当たろうと参ったらぬし様をお見掛けしたもので。つい、お声をお掛けしてしまいました」
つい…って。
身体は大きいのに、何だか可愛い。
主「実は私も、外の空気を吸いたくなったんだー。ふふ、小狐丸と一緒だね?」
笑い掛けた途端、小狐丸の大きな腕に抱きすくめられてしまった。
え…何、怒った!?
主「えっ…と…小狐丸?」
小狐丸「ぬし様…私は、私は…っ」
言いたい事を上手く纏められず伝えられない子供の様に、言葉を詰まらせる小狐丸。
彼の背に腕を回し、子供をあやす様にぽんぽんとやんわり叩く。
主「ん。どうしたの?小狐丸の思ってる事、聞かせて?」
すると、私を腕に抱いたまま少し身体を離し真っ直ぐに見据えて来る。
見詰めあってハッとした…彼の表情は眉が下がり不安げで、とても美しかった。
気付けば私は自ら背伸びをし、小狐丸と唇を重ねていた。