第3章 零部・勧誘
その日は不思議な天候だった。
しんしんと降り積もる静かな雪。でも空は明るくて雪が降ってるのに遠くの景色が見える。遥か彼方に雲の隙間から陽の光が射すのが肉眼で見える程、澄んだ雪の日だった。
「「いってらっしゃい」」
まだ幼い弟妹に見送られて職場である、国で一番大きな病院へ行く。この病院は他国の者が割と多く運ばれて来る。貿易やなんやらで訪れたは良いものの極寒雪国と言う環境に慣れずに凍傷や低体温症で運ばれて来る人々が多い。
無論、病気や怪我等の自国の患者様も多い。ただこの国は雪国だから薬草にはかなり不憫している。
「先生」
『?』
「薬草が不足していて薬の調合が間に合いません」
『昨日、他国から運ばれて来たハズでは?』
「その予定のハズだったのですが未だ戻ってきて無くて…」
何か問題でもあったのだろうか。薬草を提供してくれる国に向かったのは戦闘能力も高い医療班四名。元々この鉄の国は忍対策も万全だから忍と遭遇しても忍自身がデメリットしか無いと教えられてるハズだから変に戦闘にはならないとは思うんだけど。
-コンコン-
どうしたものかと思案していると鳩が小窓をつつく音が聞こえる。足には小さな紙切れが取り付けてある。その紙切れを手に取って内容を確認してから鳩を空に飛ばす。
「先生?」
『地下室の温室栽培場から摘んで調合して下さい。私はイロ地区にある温室栽培場から摘んで来ます』
「かしこまりました」
部下が診察室から去ったのを確認して留守と書かれた看板を扉の外側にかけて鍵を閉める。チャクラを練って印を結べばボフンと煙に巻かれる身体。鏡を見ると本来の自分。そう。病院の仕事時は外見を跡形もなく変えているのだ。こう見えても一応、札付きですからね。
『まぁ大将と側近は存じておいでですが』
ダボダボになった白衣を椅子にかけ、ロッカーから般若の仮面を取り出して装着する。そして静かに診察室を後にする。
※※※
昨夜の嵐の様な猛吹雪とは違って今日は雪は降っているものの空は明るい。極寒ではあるが。
屋根に積もった雪が落ちるのを宿の窓際に腰掛けて眺めているとペインと小南が隣室からやってくる。
「ゼツの情報によると国一大きい病院に居る事が多いとの話だ」
「真昼間からやろうってのか?」