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氷華血鎖【鳴門】

第13章 零部・終節


ちゃぷちゃぷと水面を歩く音が響く。
静かな水面。辺りの一望が困難な程の濃霧。



-ちゃぷん…-



『………』



暫く歩くと濃霧が少しだけ晴れて視界が開ける。そこに見えたのは嘗て島でもあっただろう、でもその面影すらも感じない岩肌が剥き出しの小さな山の残骸が少しだけ残っていた。



『もう三年くらいも前だもんな』



流石に事件を知った国がもう片付け等もしてるだろうし沈んだ諸々は海洋生物の住処や餌になってるだろう。期待はしてなかったが本当に手掛かり一つ見付からない。
暫く目を閉じて記憶を辿ってみるものの…やはり覚醒の最終段階については何も思い出せない。



『無駄足だったかな』



村を出て既に三日は経過してる。此処から戻るのに二日はかかるから、いつまでもダラダラと此処に居座る訳にもいかない。信頼出来る村人に弟妹の事は任せているものの、やっぱり心配だし。



『!』



くるりと踵を返した時だった。無骨な岩肌の山に赤く光るモノが見えた。



『これは…!どうして………』



自分の背丈程の小さな岩肌の山に墓を模した様な赤い結晶が控えめに建っていた。その墓らしきモノには花で作った冠がぶら下がっていて前には花束が置いてあった。花の枯れ具合的に一週間そこそこ前くらいに誰か来てる…し。この結晶は…



『血遁…』



そんな…馬鹿な事があるハズが無い。血遁を使えるのは…もうアタシだけのハズ。それは父の故郷である鉄の国に潜伏してる時にちゃんと確認したしその血族はたとえ血遁を遺伝してなくても全員殺した。血遁を引き継げなかった父も三年前にアタシがこの手でバラバラに殺してる。
だとしたら…誰?



『………まさか…』



ユキトかシズルのどちらかが生きてる…?否、そんなハズは無い。父みたいに直接手を下した訳じゃないけど、あの津波で生存出来る訳無いし水面が静まってからも暫くは様子見て生存者が居ない事も確認済み。



『………でも』



もし運良く生存してたとしたら?血遁を使えたとしたら?
いや、違う。もしユキトやシズルが血遁を使えたとしたら?



『どちらか…或いは二人共生きてる』



運命が変わろうとしていた。




















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