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氷華血鎖【鳴門】

第6章 零部・医者


この村は忍が居ないから恐らく俺達の事は知らない。この様な山奥の集落であれば見付かる事も少ないだろう。だから此処を選んだのだと伺える。



『リーダーには既に文を出してる。御二方も病や怪我をした時はいつでも言って』

「…まぁ…その………なんだ?」



照れ臭そうに頬を掻いたかと思うと荒々しくチヅルの頭を撫でるのは十蔵。



『うわっ』

「餓鬼共に宜しく言っといてくれ」

『うん…有難う。怪我とか病気とかしなくても近くに来たら寄ってね!』



まるで子供の様な笑みを浮かべながら手を振るチヅル。当分の間…チヅルと会う事は無いだろう。





※※※





弟妹が目を覚ましたのは二人と別れてから数時間後だった。寝込んでいたマツも薬が効いたのかすっかり回復の傾向にあった。ただ、目が覚めてから二人が居ない事やその説明をしたら悲しそうに俯いた。一緒に居た時間が多少なりともあるから、あの二人には懐いてたし寂しいのだろう。



「いたちにぃにとじゅうぞうおじさん、いつかえってくる?」

「おしごといつおわるの?」

『うーん…忙しいお仕事だからなぁ…二人がいい子にしてたらそのうち会えるよ』



まぁ多分…暫く会えない様な気はするけど。なんたって暁のメンバー自体がそもそも揃う事は滅多に無いらしいし。アタシを勧誘するにあたって全員がアジトに揃ってたのは本当に偶然らしいし。定期的に開かれる会合も全員がシルエットだし。



「じゃあぼくしゅぎょうする!ねぇねみたいにつよくなる!」

「わたしはねぇねみたいにおいしゃさまになりたい!」

『そっか…じゃあここでの生活が落ち着いたら修業しようか』



アタシと似た瞳、髪を持ってる以上…弥生と言う姓がある以上アカデミーに通わせて忍にさせてあげる事は出来ないけど。だけど教えてあげる事は出来る………寿命が保てれば。



『さーて!じゃあ新しいお家の模様替えでもしようか!』

「「はーい!」」

『あ、マツはまだ寝てなきゃ駄目よ』

「えー?もうげんきだよ?」

『だーめっ!今日まではちゃんと寝るの』

「はーい…」



此処で暫くは平穏な生活を。
そう思ってたのも束の間の話だった。




















→to be continued.
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