第34章 一部・双子の病
まぁ最近は大きな依頼も落ち着いてるし確かに休憩には持って来いの場所だとは思う。ちゃんと寝床もあって何より飯が美味い。
サソリの旦那も落ち着いて傀儡の手入れが出来てるみたいだし暫く滞在するのも良いかなーって考えてた時だった。
「ちーっす。チヅ居るかー?」
一同「!」
突如として庭に顔を出す如何にもなヒョロっヒョロな男。チヅって…チヅルの事だよな。随分と親しそうじゃねぇか。
「おや…ミツさんじゃありませんか」
「よう、鬼鮫のあんちゃん。チヅは?」
「今は居ない様ですね…」
「そっか」
軽い調子で話すとズガズガと庭に足を踏み入れて大きな風呂敷を抱えていた。
「…何だァ?人が増えてるな。しかも子供…暁ってのは子供も居んのか?」
「おいテメェ!オイラを餓鬼扱いすんじゃねぇ!」
「………」
暁の事を知ってる…のか。何者だこのヒョロい男は。
「まるで託児所だな」
「この…!」
「たんまたんま、悪気は無いって。俺一般人だから攻撃は無しな」
風呂敷を持ったまま観念する様に両手を上げて縁側に風呂敷を置く。
「これ、村の皆からってチヅに伝えといて」
「ご苦労様です」
そう置いていった風呂敷の中身を見ると米や野菜が入っていた。
「何だアイツ」
「この村の長でチヅルさんの不在中は双子の事を任されてる方ですね」
不在中…そいやぁこないだ来た時は不在だったな。確か凄く珍しい薬草を探してるとか言ってたか。
※※※
「「ただいまー!」」
明るい声が玄関から聞こえて来てパタパタと縁側を駆けながらカツラを脱ぐと部屋に飛び込んで荷物を放り投げると庭に降りて来る。
「ねぇ修行付けてー!」
「おや…良いんですか?」
「小僧、テメェはやめとけ。チヅに怒られるぞ」
「えー…今日学校では大人しくしてたから大丈夫だよー」
むくれる様に頬を膨らませるトシの前に何処からか音も無く急にチヅルが姿を現す。
「ほら言わんこっちゃない」
『トシ』
「ゔ…だって身体鈍る…」
『今日一日は駄目よ』
手に持つ薬草を威嚇する様にトシの目の前で揺らして先程ミツが持って来た風呂敷の中身を確認して抱える。