第30章 一部・帰村
何をそんなに急いでいるのか分からず、その言葉の先を促す様に見詰めればゆっくりと目が伏せられる。
『兄弟を殺し損ねたのは痛手だけど、いくら優秀な医療忍者が向こうに居ようと当分は動けないしシズルに至ってはもう血遁は使えない…否、正確には使えなくなる』
使えなくなる…あの目まぐるしく変わる激しい戦闘の中でチヅルは何らかの策を講じていたと言うのか。
『シズルの血遁を封じる為にも、まずアタシの血も要るから村に戻って増血剤を調合しなくてはならない、し…』
「………」
『イタチさん。貴方を一刻も早く診察しなければならない』
「!」
『あの秘術…完全では無いから…御免…』
掠れた声でそう言ったチヅルは布団をキツく握り締め唇を噛み締める。そんな姿が酷く愛おしくなってチヅルを引き寄せる。
『!』
「有難う」
※※※
「はぁ…」
マツに指示された通りに術を発動したら丸四日、寝込んでしまった。所謂チャクラ切れと言うやつで、そのチャクラが回復するまでに丸四日。チヅルが居ればちょちょいのちょいで復活させてくれるんだろうけども。
「つーかアイツ等元気だよなぁ…」
学校から帰って来て早々に組手を始めてそろそろ一時間。すっかり陽も傾いて来た。
「子供は元気ですからねぇ…」
「それな。つーか鬼鮫のあんちゃんはいつまで村に居るんだ?」
「取り敢えずはイタチさん次第ですかね」
イタチ次第って…そもそもイタチは何処に行ったんだ?マツ曰くチヅのところって言ってたけど、そもそもチヅが何処に居るか分からないからなぁ。
「おや…噂をすれば何とやら」
「?」
「「(姉様/姉上)帰って来た!!!」」
え、嘘。何処にも居ないけど。
※※※
パタパタと走って行く双子を追いかければ確かに二人が居た。丁度村の入口をくぐり抜けたところだった。何でコイツ等は二人が帰って来た事が分かったんだ。これもチャクラがどうとか言うやつか?
「「お帰りーっ!」」
『うわ、ちょっと二人共!』
勢い良く飛び付く双子をいつもの様に抱き留める…かと思えば、その勢いに耐え切れずチヅの身体が後ろに倒れかけるのをイタチが支える。
「………」