第2章 うらたぬき*君が離れないように
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私には大好きな幼馴染がいる。
大好き、と言っても人間として、友達としての好きだからそんなに深い意味も無いのだけど、とにかく私は彼が大好きだ。
チビのくせに意地張るとこ。
困ってたら直ぐに助けてくれるとこ。
数えきれないくらいいい所が沢山あってカッコよくて、彼は学校でもモテモテだ。
でも彼は私にも優しくしてたまに頭を撫でたりして構ってくれる。
⋯⋯こうやって、幼馴染として仲良くする関係がずっと続くと思ってた。
*****
「⋯⋯ん、」
目が覚めたら彼の部屋にいた。
うらたくんの部屋に入るのは高校に入ってからは初めてだし、男女の壁ができてからはろくに遊んでもいなかった。
久々のこの感じに感動しているとある事に気づく。
(私、どうやってここに来た?)
「今日は普通に学校行って普通に帰ってきて⋯⋯あ、曲がり角から覚えがないや⋯⋯」
おかしいな、もしかして私が貧血とかで倒れてる所をうらたくんに助けてもらったとか?
うん。多分そうだな。
自己解釈しているとドアが開いて、そちらへと目線を向けると翡翠色の瞳が静かに私を捉えていた。
「おはよ、気分どう?大丈夫?」
「うらたくん!んー⋯⋯なんか喉がイガイガするけどそれ以外は何ともないよ。
あ、その⋯⋯私ってなんでここに居るか聞いていい?全然覚えがなくて、あはは⋯⋯」
なんか粉でも口に入れたのかな、口内が少し粉っぽい気もする。薬でも飲ませてくれたのかな?
うらたくん紳士すぎる⋯⋯
すると、うらたくんは嬉しそうにドアを閉めた。
「凛、今からは俺ら二人きりだよ」
「え?」
「凛さ、最近坂田と仲いいじゃん。だからさ、俺嫉妬しちゃった」
「う、うらたくん⋯⋯?」
ガチャ、とドアの鍵を閉める音がした。