第52章 居場所
「・・・私もよく分からないんです」
本当に正直な話、彼は大学院生で探偵で、コナンくんや有希子さん達と手を組んで組織のことについて調べている、としか。
・・・ただ、組織について調べていることは、まだ彼には話せそうもないが。
「ただの大学院生みたいですけど・・・?」
「僕も調べてみたが、それくらいしか素性は出てこなかった」
やっぱり調べたんだ。
それはそうか、保護すべき対象が誰かと接触できる状況であれば、色々と疑うべきだろうし。
「一緒に居る間、首元にチョーカーはついていなかったですか?」
「・・・昨日言ってたやつですか?」
恐らくあの変声機のことだろうけど。
「いえ・・・見たことないです」
また、嘘を吐くことになるなんて。
この嘘は悪い嘘だ。
バレたら・・・幻滅されるかもしれない。
それでも、何故か昴さんを庇うような嘘を吐いてしまった。
「そうか・・・」
昨日のことがあるから、私が何となく察することは彼だって予想できたはずだ。
それでも聞いてくるということは・・・。
「何かされませんでしたか?」
「・・・へ?」
突然の問いに彼へと目を向けると、いつの間にか向けられていた視線に気付いて、途端に冷や汗が吹き出した。
「あの男に、何かされませんでしたか?」
軽く体を詰められながら再度問われた。
何か、と言われれば、無いとは言えないが。
でもあれは昴さんが悪いとも言い切れない。
「べ、別に何もありませんよ・・・」
両手の手の平を前に出しながら自然とガードを作っていて。
「一晩のうちに名前で呼び合う仲になっていることに、僕は疑問を持っているんですけどね」
「・・・ッ」
笑顔なのに。
その笑顔に酷く恐怖を覚えた。
本当はバレてるんじゃないか、とすら思って。
「それに、昨日あの家に居たことも気になっているんですが。その経緯、教えて頂いても?」
彼はもうバーボンではないはずなのに。
今までとは少し違う恐怖に冷や汗が止まらなくなった。