第112章 恋愛で※
その日の夜。
普通ならば、今頃帰ってご飯の準備でもしている頃だけど。
私はとある公園のベンチに座って、空を眺めていた。
そういえば以前も、ここで夜風に当たったことがあった。
あれは・・・沖矢さんと・・・。
・・・いや、そんな事思い出さなくてもいい。
「・・・・・・」
帰りたくない。
帰って、どんな顔をしてたら良いのか分からない。
そろそろ零も帰る頃だろうか。
・・・そういう直感は。
「・・・!」
何故かよく当たる。
ポケットに入れていたスマホが振動し始めたことに気付き、手に取り画面を見れば案の定、彼の名前があって。
「・・・・・・」
電話に出て、これから帰ると言えばいい。
そして何事もなかったように、普通に過ごせば良い。
実際、何も無かった。
私が勝手に怒っているだけだ。
それも、元彼が理由なんて。
馬鹿馬鹿しい事この上ないじゃないか。
・・・でも。
それでも。
今は冷静でいられる気がしなくて。
その日は何度も掛かってきた電話を無視し続け、元々少なかったバッテリーが落ちたのを確認すると、近くのホテルで1人一夜を明かした。
ーーー
「・・・で、今に至ります・・・」
あれからスマホの電源も入れていない。
入れれば、何らかの方法で探されそうだったから。
「・・・馬鹿なの?」
「分かってる・・・」
それは痛いほどに。
大人気無いことも。
「こういう時、どうすれば良かったのかな・・・」
これを、志保さんに相談するのもどうかと思うけれど。
自分ではもう、答えが見つけられなくて。
藁にもすがる思いで、俯き拳をキュッと固くしながら呟くと、彼女は大きくため息を吐いて。
「そんなの、相手に聞かなきゃ分からないでしょ」
・・・それは、そうかもしれないけど。
何と問えば良いのだろう。
「貴女が間違えているのは、話をしていないことよ」
そう志保さんに言われ、どちらが大人なのか分からないな、と更に俯いて。
何も言えなくなった私を、志保さんは静かに見つめた。