第110章 キスで※
「・・・っ、零・・・」
快楽はある。
けれど、どこか恐怖に似た感情もある。
それは視界が真っ暗なせいなのだと思い、彼の手を剥がすように手を掛けて。
けれどそれが動くことはなく、その間に敏感な蕾は彼の口内へと含まれ、舌先で転がされ始めた。
「い、ぁ・・・れい・・・っ!」
こんなにも、感覚は鋭くなるものなのか。
視界を覆うというそれだけのことで、聴覚も触覚も、全てが研ぎ澄まされる。
だから余計に、快楽を大きく感じる。
「ハロが来るぞ?」
そんな事を言われても。
声も勝手に溢れてくるのだから、どうしようもない。
もう既に、自分でどうにかできるような体では、ないのだから。
「っや、ぁあ・・・!!」
視界が覆われているせいで、気付かなかった。
彼の手がいつの間にか、太ももの方に伸びていて。
それが優しく撫でるように滑り、秘部へと伸びていたとは。
「ひゃ、ぅ・・・っ!」
下着越しに割れ目を撫でられ、微弱に快楽を与えられる。
その瞬間、気の抜けた声が漏れ、ビクッと体を跳ねさせた。
「・・・ひなた」
「ッや・・・」
不意に、そういう事をするのはやめてほしい。
視界を奪われている中で、耳元で囁くように名前を呼ばれ、体や脳が反応しない訳がない。
ゾクッと背中に何かが走るような感覚と、確実にそこへ存在している快楽とが入り交じり、パンク寸前だった。
「下着越しでも、音が聞こえてきそうだ」
・・・嫌だ。
そんな短い言葉も出ない。
それは単純に話す力が無いのもあるけれど。
本当にそう思っていないことが、脳では分かっているからで。
「ふ、ぁ・・・ぁあ・・・!」
下着越しに触れる指の力が、僅かに強くなって。
苦しさも、比例するように大きくなって。
息が止まってしまいそうな感覚の中、体はもっと大きな快楽を求めるように、もじもじと体を捩らせた。