第99章 生きて※
「・・・ついた」
何とも頼りない、薄らとした痕を見つめては、そこに指を這わせて。
どうやら私では、これ以上しっかりとしたものを付けられないようだ。
「ひなた」
艶かしい声で呼ばれれば、触れられていないのにどこか触れられた様な感覚に陥る。
同時に、私のナカで彼の質量が増したようにも感じて。
それにどこか恥ずかしくなり、思わず彼の口を手で塞いだ。
「い、今は・・・っ」
見ていろと言われたけれど。
彼の表情なんて見れなくて。
「今は、何も・・・言わない、で・・・」
これ以上何か言われれば、色々耐えられそうにない。
既に顔も、体も・・・こんなに熱いのに。
「・・・!」
そのまま目が合わせられずにいると、彼の口を塞いでいた手を徐ろに取り払われて。
そこへ視線が引き付けられるようにゆっくり顔を動かすと、途端に視界は一転した。
「・・・っ」
いつもの、視界だ。
彼が上から見下ろして、私がベッドに横たわっていて。
でもいつもと少しだけ違うのは。
「・・・ひなた」
彼の、表情で。
「ッ・・・」
そんな顔で、名前を呼ぶから。
ただでさえ熱い顔が、更に熱くなって。
つい、顔を逸らしてしまった。
「・・・!」
でも案の定、その顔はすぐに彼の手によって引き戻されてしまった。
その間も彼は、酷く艶かしい表情のまま、僅かに口角を上げるだけで何も言わなくて。
・・・いや、違う。
何も言わないでと言ったのは、私だった。
「ひゃう・・・ッ!!」
彼の表情に目を奪われていると、突然彼が私を勢いよく突き上げて。
それまで彼が入っていたことを忘れてしまうくらい、私は気が逸れていたことに、その時ようやく気付かされた。
「零っ・・・」
体が、おかしくなりそう。
・・・違う、おかしくなっている。
彼は一度しか突き上げなかったのに。
どうやら軽く、達してしまったようで。