第97章 最終的

「透さんは、連絡手段を持っていなかったですよね･･･？」
「それはあの男の車に乗る前からだろう。それよりも前に、彼とはコンタクトを取っていた」

そんなに、前から･･･。

「彼は組織での計画を聞いた後、組織の人間がいない時に直接接触してくるように男に仕掛けた」
「･･･そもそも、その組織の計画ってどういうものだったんですか」

単純に後を付けさせて狙う、というのは浅はか過ぎないだろうか。

でも実際は、そうしたように感じた。
男がついて来ている気配は無かったけれど。

「それはこちらの範囲外だ。彼に聞くと良い」

･･･肝心な所は教えてくれないのだな、と思いつつも、確かにこれは赤井さんに聞くべきことではなかったか、と再び小さく息を吐いた。

「でも、あの場所はあの時、男が決めたんですよ。どうやって先回りを･･･」
「気付かなかったのか？」

･･･気づかなかった？

「無理もないか。あんな状況では」

まるで、ずっと私を見ていたかのような口振りで話す赤井さんに、僅かに睨みをきかせた視線を送った。

「彼のループタイに付いていた飾りには、君の技術が詰め込まれている」

少し改良はしてもらったがな、と付け足した彼の言葉を聞いてようやく、ハッとした。

それと同時に、またか、という思いも込み上げてきて。

彼のループタイに、私の作った映像転送装置が隠し付けられていたんだ。

幾度となく用いられるアレに、作ってしまった事を後悔すらした。

つまりは、私達の行動は全てFBIに筒抜けだっ･･･た、ということ、で･･･。

･･･ということは。

「まさか･･･」

その瞬間、背中にヒヤッとしたものを感じて。

「見ていたのは･･･組織と接触する前からじゃ･･･ないですよね･･･？」

あの作業小屋で、私は。

･･･彼に。

「残念ながら、あの時は音声だけを繋げられていた」

そう言って、フッと沖矢昴の顔で笑う赤井さんを見ては、一気に顔が熱くなったのを感じた。

･･･聞かれた。

いや、聞かせたんだ。

あの時の、甘い声を。