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最愛 【黒子のバスケ】

第12章 何度でも


シカゴから帰国して2週間。

少し前までの寒さは和らいで、本格的な春を迎えてあちこちで新しい生活が始まっている。

取引先では新人さんを何人も紹介されて、名刺をたくさんもらっていたから病院の予約の時間までそれを整理することにした。


シカゴで真太郎に連絡をした時に“なるべく早く”と言われたけど、中々休みが取れなくて結局今日になってしまった。

真太郎からも大我からも運転中に痙攣を起こしたら危ないから運転は禁止って言われて、さつきと美緒にも事情を説明して空港の帰りも代行を使った。


帰国してから何度も“検査したのか?”って聞いてくる大我にメッセージを入れる。

(今日検査してくるからまた連絡するね)


病院で受付を済ませるともう準備ができているらしく、すぐに真太郎が来てレントゲン室一緒に向かった

「検査技師は男性だが、女性看護師が立ち会う。ゆっくりで構わないから技師の指示に従うのだよ」

「……うん」

「院内には玲子もいる。今の時間は患者を入れていないから、辛かったら看護師に伝えろ。無理しなくていいのだよ」


レントゲン室の前で真太郎と別れて、特有の重い扉を開くと、男性技師と顔見知りの看護師さんがいて着替えをするように促された。



仕切られたスペースで指定された検査着に着替えると、男性技師がカルテを見て検査台を指しながら座る場所の指示を出した。


「それでは、このバツの所に右の内ももが来るように、少し脚を開いて座って裾をまくり上げてください」

「……はい」


検査台に座ってゆっくりと呼吸を整えながら、自分で裾をめくろうとしたけれど、あたしの遅さに呆れたのか突然男性技師が裾をまくり上げて、傷の部分を掴んだ。



「先生!傷にはっ…………」




焦ったように男性技師を止める看護師さんを視界に捉えながらも、頭の中に流れるのは

あの時のあの痛みと恐怖

あたしを押さえつけるものすごい力



あの時のあの瞬間
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