第8章 それぞれの場所
side緑間
赤司からの提案を受けて翌日桃井に連絡を取って事の次第を話すと驚いたようだったが、みさきが怖がっているということを黄瀬の彼女から聞いていたようで、むしろ納得したと言う感じだった。
「みさきに持たせるGPSと契約書を渡したいんだがいつなら時間が作れる?」
「みさきが戻るまであたしも仕事だから夜とかでもいいかな?」
「そっちの予定で構わん。黄瀬の彼女と来てくれると話も早いのだよ。お前たちはみさきの10年前のことを聞いているのだろう?」
火神から、みさきが桃井と黄瀬の彼女に10年前のことを話したということを昨日の電話で聞いていたから、一緒に来てもらって二人に一挙に説明すればみさきへの説明の時に抜けがあってもどちらかがフォローできると思った。
みさきが帰ってくる1日前に時間が取れて赤司と二人で待ち合わせ場所に向かった。
「初めまして。進藤美緒です」
「緑間真太郎なのだよ」
「赤司征十郎です」
初対面となる黄瀬の彼女は、あいつが選んだとは思えない程キリっとしていて頼れる女性といった風に見えた。
会話を他に聞かれるのは避けたくて個室を取っておいたのは正解だった。
今回の内容をもう一度確認して二人に手順を説明する。
GPSをダウンロードして契約を交わしたら、赤司の会社の警備システムと連動させておかなければ警備が位置情報を確認することができないからそれだけは絶対に忘れるなということと、みさきが契約を渋るようなら赤司の妻を間に挟んですぐにでも説得をすることを説明した。
「それからこれはうちの社のGPSだ。スマホのGPSは便利な反面干渉電波に弱く電源が入っていないと機能しないと言う弱点もある。それをカバーするのがこれだ。警護対象に持たせるように独自に開発してるから地下2階程度までなら問題なく電波を拾える。仮に地下駐車場やトンネルなどで万が一の事が起きても見失わずに追跡できる。そしてこのGPSは位置情報を取得する契約書が必要ない。もし黒須さんが契約を渋ったとしてもこれを持たせておけば取り急ぎの策としては機能するだろう」
赤司の説明を真剣に聞く二人を見てみさきはいい友達を持ったとこの状況でも少し嬉しく思えた。