第2章 直感
「引っ張りすぎて悪かった。ケガしなかったか?」
青峰から声を掛けたことも驚きだけど青峰の方から謝ったことは更に驚いた
何も答えないみさきを見ると青峰を見て大きな目を見開いたまま瞬きもせずフリーズしている。
泣いてたせいかいつもより潤んだ瞳が青峰を捉え続けていてその目には青峰以外は何も映ってない
イヤな予感がした。
「おい、みさき」
名前を呼んでも相変わらず青峰を見てて俺の声なんか届いてもいなかった。
「おい!みさき!青峰が大丈夫かってよ」
「あ…うん。大丈夫」
少しだけいつもより大きな声をだすと気の抜けたような、自分に言い聞かせるような小さい声で呟いたきりまた黙り込んだ
さすがに反応が薄すぎるみさきに桃井が覗き込んで声をかけるとハッとしたように突然青峰に謝り出して、その顔はいつもよりも赤い。
酒に酔ったってことは…多分ねぇ。
こんなみさきを見るのは初めてだった。
それでも好きな女の事だから分かっちまった
ガキの頃からずっと一緒だから嫌でも分からされた
みさきは青峰に惚れたんだ
ずっと誰のことも好きになれなかったみさきが会ったばかりの青峰に惚れたんだと直感した。
青峰……
またお前かよ
いつだって俺に立ちはだかるのはお前だ
高校のときもそうだった。
順調に勝ち上がってインハイに行けるかという勢いのときに遅れてきたお前に叩きのめされた。
バスケではリベンジできたけど、どうやら今回はそんな奇跡は起きなさそうだ。
ガキの頃から一緒にいるみさきがあんな顔を見せたのは青峰が初めてだった
だから勝ち目はないんだと一瞬で悟った
自分の彼女にしたい気持ちがなかったと言えば嘘になる。
けど恋愛する気が少しでも起きたならそれだけでいいんだって思ってる。
女としても幸せであって欲しいというのが俺と玲子さんと緑間がずっと願い続けてきたことだから。
例え相手が俺じゃなかったとしてもみさきが前に進めればそれでいい。
今はまだ好きな気持ちを昇華させることはできねぇけど、みさきが幸せになれたら俺も前に進めそうな気がする。
みさきは俺の片割れだから
みさきが進むなら俺も進める