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最愛 【黒子のバスケ】

第25章 起憶


身の丈に合ってないと何度も言われると、確かにそうかもしれないって思ってしまう


だけど、さっきの…


“お互いがお互いを選んでる”


美緒の言葉と、黄瀬君の言葉は時々似ている時がある

付き合って3年か…
きっといろんなことがあったよね
でも二人はお互いに一緒にいることを選んでる


美緒があたしに言ってくれる言葉は、黄瀬君が美緒に伝えてきた言葉なのかもしれない



あたしは青峰君と一緒がいい
だから青峰君にもそう思って欲しい



美緒は別にここに用事はなかったのに、中から聞こえたあたしの声に、様子を見ただけだって仕事に戻ったから、あたしも冷めてしまったホットタオルを使用済みの方に片付けて、新しいホットタオルを持って部屋を出た



熱いホットタオルをパタパタと冷ましながら、青峰君が待ってるメイクテーブルに戻ると、あたしに気付いて少しだけ笑ってくれた


「お待たせしました」


部屋の隅の、人目が届かないこの一角

メイクとクライアントだけど、優しい目と視線がぶつかると嬉しくなってしまう


青峰君に近づいてマッサージがしやすいように向かい合わせに椅子に座って手を出してもらうと、青峰君がギュっと手を握って軽く引っ張られた

「髪になんかついてるから、頭もうちょいこっち出せ」

「あ…ありがとうございます」


言われたとおりに少し頭を下げて青峰君に近づくと、ふわりと大きな手が頭に乗せられて
同時に耳元で優しい声が響いた




「愛してる」



いつもはゆっくり伝えてくれるけど、今は少しだけ早口で、本当にあたしにしか聞こえない程の小さな声

だけど確かに聞こえたその言葉は、さっきあの男性スタッフに言われたことをすべて否定してくれてる様だった


あたしが何か返事を返す間もなく、それだけ言って一瞬で離れてしまったことに少しだけ寂しさを感じながらも、不自然に近い距離にいるわけにはいかなくて、手のマッサージを始めた



青峰君に言われるこの言葉は温かくて、優しくて、幸せで
ずっとそう思ってもらいたいって欲があふれ出す


別に他の人がどう思っていようがどうでもいい


青峰君が愛してるって言ってくれるなら、少しでも誇れる自分でいたい
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