第22章 大雨
『あたし、妊娠してるの。もちろん相手はダイキよ。何度も求めらて……今すごく幸せなの』
妊娠は、多分してない
歩き方を見ても骨盤の緩みはないし、頸動脈の速さも通常と変わらない。
それにさっきカレンさんはお酒を飲んでた。
大切な人との子供がお腹にいて妊娠を喜んでるなら、お酒なんて普通飲まない。
『承知いたしました。撮影中何かメイクで不都合がありましたらおっしゃってください。それから、青峰さんに使用するコスメで避けた方がよろしいものがありましたら教えてください』
『それだけ⁉カレンが無理矢理されたのはあなたに満足できなかったせいなのよ!!彼女に謝りなさいよ!』
絶対に謝らない
だって青峰君はそんなことしないって分かってるから
いつも不慣れなあたしに合わせてゆっくり進んでくれて、まだキスより先に進めないあたしに、謝らなくていいって言ってくれるような人だから。
無理矢理なんて絶対しない
『サラ、いいのよ。最初は混乱したけど今は本当に嬉しいの。ダイキに愛されてるのは私だって実感してるの』
怒って震えるサラさんをカレンさんがなだめてるとこを見ると、サラさんは多分本当にカレンさんが妊娠してるって思ってるように見える。
『何言ってるの?あなたたち…』
『ハンナ、いいの。これも仕事よ。あたしが対応する』
本当はあたしだって反論はしたい。
青峰君のことをそんな風に言われるのは心外でしかない
だけどここであたしの私情を挟んで拗らせるわけにはいかない。
とにかくカレンさんを落ち着けて、明日からの撮影を成功させないとこのプロジェクトは完成しない
『申し訳ございませんが、クライアントのプライベートに踏み込むことは致しておりません。事実であるならば警察に行かれる方がよろしいかと思いますが、それはカレンさんがお決めになることです。わたくしがその件で何か申し上げることは一切ありません。撮影のメイクで何かあればいつでも対応いたします』
『あんた、女失格よ‼』
『他に承知しておく事がなければこれで失礼させていただきます』
女失格………
最後に相手のメイクに言われたこの言葉は刺さった
分かってる
そんなこと言われなくたって分かってる
そんなこと…自分が一番分かってる
『このこと、みんなには黙ってて』
『でも……』
『お願い』