第1章 家
「ーー花奏は、勝手に決められて、それで良いのか?」
黙っていたカカシが声をかけてくるが、少しとんがった声を出している。よほど気に食わないらしい。
暗部で隊長として、あまり感情を表に出さず、淡々としているのに、今日は少し様子が違って感情的だ。
「……?」
しかし狐面だから、表情は分からない。さらにカカシはマスクを常に付けている。
カカシはたぶん、人に自分の顔を見せるのが苦手なのだろう。カカシは幼少期からそれは変わらないのだから。
でも、小さい頃は外してた気がするなぁ。
「勝手に決められた……?何が決まったの?それよりね、あのねカカシ、お金貸してくれない?今日、とりあえず泊まる宿を探したいし」
「三代目が言った話、お前理解してないな。火影命令だと言っただろう?」
諦めたように再度溜息をつき、カカシは、小さく付け足す。
「オレの家に一緒に住ませろ。という意味だ、あれは」
ーーーカカシのアパートに⁈
「は?ーーーいや、……ちょ、三代目ーー!!」
「おい待て!会合だと言っておられただろう!やめておけ」
振り返って火影室に走って行こうとする腕をがっしりと掴まれ、私は納得出来ないし、理解も出来ない。
ーーおかしい。いや、絶対無理。
私は確かにカカシとは幼馴染で同期で同僚だ。近いと言われれば近い。
だけど私女の子だよ?男の子じゃないのにーーー!やっぱり爺さんは変な事ばっかり言い出す!
よくよく考えたら、カカシとはいつも一緒だ。暗部に任命された日も同じだ。
後からミナト先生に確認したら、にっこり笑ったから、ワザとなんだって気がついたけどね。
何でですか?って聞いたらカカシが花奏も行くなら行くって言ったらしい。いや、何で私がいるのが条件なんだ。よくわからない。