第2章 アパート。
「……何が出たんだ?」
落ちついた声で優しく聞いた。
「浴室……床にいるでしょう?」
「は?……どこだよ」
溜め息混じりで、浴室を見た。ほんの数センチの黒光りの厄介虫を見つけた。が、もう息途絶えている。人騒がせな。
「いや、死んでるじゃない、こいつ」
「むりなの!触れるのも、触るのも、見るのも、ぜんぶ無理なの!」
はぁぁ……溜息をついた。
「わかった。取るよ。だから離れてくれない?」
花奏に言えば、ようやく身体を放した。棚に置いたティッシュ箱から数枚取り出して捕まえた。
やっぱりもう息してないじゃない。何がそんなに恐いわけ?
「花奏、取ったよ」
くるりと振り返って花奏を見た。しまった何もつけて無い。
「っ!!悪い!」
思いっきり全裸を見てしまったオレは、顔を横に向けて目を逸らす。
「え?……キャァ!」
ちらりともう一度目を向ければ、
片方の手を胸に置き、もう片方を下半身を隠していた。顔がまた真っ赤になっている。そりゃ恥ずかしいわな。オレ普通に任服着てるし。
「じゃあ、もう大丈夫でしょ、ごゆっくり」
横をするりと通り抜けて、脱衣所を離れた。
「カカシ……ごめんなさい。ありがとう」
か弱い声が浴室から聞きながら、机に肘をついて椅子に腰掛けた。
「ああ、気にすんな」と声を出しながら口元に手を置いたが、頭は先ほどの映像が繰り返し流れる。
思いっきりみてしまった花奏の裸体。まだ出だしだぞ?こんな調子でオレはやっていけるのか?自問自答していた。
いつも花奏は、暗部の任服姿しか見た事が無かった。あんなに女の子らしい身体つきをしてるとは思っていなかった。
可愛いらしい体のシルエットに、オレの手より少しだけ大きめの胸。可愛いくて色っぽい女に成長したんだな。
じわりと、触りたい衝動に駆られてしまう。花奏は、何カップあるんだろうな……。
って何を考えてんだ、オレは!
邪な考えを頭に広がるのを停止させ、オレは懸命に抑え込んでいた。