第2章 旅立ち
あれから一週間はあっという間に過ぎ、いよいよ明日引っ越しの日を前に、仲の良い友人達がホームパーティーを開いてくれるとの事で朝から何やらてんてこ舞いである。
料理は趣味だし好きだから手伝うとキッチンに向かうが、主役は黙って座っていろと言われ追い出されてしまえばやる事もなくなり暇になった。
修が今日くらいのんびり散歩でもしてこい、と言うので最後だしそれも良いかと思い、部屋着からバスケスタイルに着替えるとボールを持ち家から出た。
「やっぱバスケが一番好きだ」
バスケをしている時だけは、何もかも忘れられる。
寂しい気持ちなど感じなくてすむ。
ー…それで…本当に幸せ?…ー
「!?」
急に聞こえた声に驚き、振り返る
けれど近くには誰もいなくて、空耳かと思い直し再び足を進めた時だった。
急に頭に激痛が走り、頭を抑え蹲ると、そこで意識を失ってしまった…。
「…だろ?」
「しかし…、ある……よ」
(人の声…?誰か…いるの?)
痛む頭を抑えつつ倒れていた体をゆっくりと起こすと、辺りを見渡す。
そこは、室内で沢山の机に椅子、教卓、黒板迄ある。
何処の学校、だろう事は分かったが驚いた事にそこは真っ暗なのだ、嫌内装が判別出来るのだから真っ暗とは言えないが、よくよく目を凝らさなければ数メートル先も見えないくらいには暗いその場所に、身震いがした。
「何、ここ…」
普通に考えておかしすぎる
私はアメリカにいたのだ、しかも時刻は昼前で夜でもない。
それなのに今は暗く夜なのは分かるがそれだけで語りつくせない違和感を覚える。
「学校…でも、この風景って…、!」
その時だった、先程も感じた誰かの話し声に咄嗟に身を屈める。
得体の知れない場所にたった一人、しかも多数の人間の声。
これが誘拐といった犯罪なのだとしたら、今すぐに逃げなくてはいけない。
その為にもまず、相手が何者で何人いるかを把握したい
四人以内ならば問題ない
倒せる自信がある。
伊達に修に空手を習っていた訳じゃない。
しかし相手もまた強者だったのなら話は別になる。
ここは慎重に事を運ばなくてはいけない。
「絶対ここから人の気配すんだって!」
「しかし人間である保証はないだろう。」
「人間だよ、眼を使ったから間違いねーし。」