第1章 転校
「転校なんてしたくない!!!!」
高二の終わり頃、突然両親が離婚した。
本当に突然だった。
大阪府のとある大学で知り合った両親は、お互い初恋でこれは運命だと思ったらしい。その話をもう何千回と聞かされた。
新婚の頃から行ってらっしゃいのチューは欠かさないし、
年に1回、2人で京都まで旅行へ行ったりもしていた。
仲の良いおしどり夫婦はウチのことだと思っていた。
私はそれが自慢で、そんな2人が大好きだった。
「大人の事情だ」
父はそう言って、外へ出たまま帰ってこなかった。
たった一言で一家族はこうも容易く終わってしまうのか。
大人の事情かぁ、子どもは蚊帳の外か。
学校は?
「もうあっちで手続きしてあるから」
友達は?
「あっちでまた作りなさい」
バイトは
「そんなのまた見つければいいでしょう」
高校生が、どれだけ友達を作るのに苦労するかわからないのか大人は。ましてや高二も終わる頃に転校してグループが出来ているところに「仲間に入れて!」なんてメンタル持ち合わせていない。
それに、東京は恐いイメージがある。いじめられたらどうしよう。
バイトだって、高一から始めたパン屋さん。
やっと慣れてきたところだったのに。
結局理由は教えてくれなかった。
一週間後、母に手を引かれるまま東京行の新幹線に乗った。
ほとんど会話はしなかった。
東京は、どの建物も大きい。
お店の前に特大フグもぶら下がっていないし、おっちゃんが話しかけてくることもない。
すれ違う人、すれ違う人、誰とも目が合わない。
ぶつかる前提なのか、避けろ避けろと言わんばかりにどんどん人が向かってくる。
恐い
帰りたい
東京の新居へ着いたのは、もう日が暮れてからだった。
築10年はたっているであろう、駅徒歩15分の2LDK。
前の家と違って要所要所軋んだり黒ずんだりしている。
それを見てまたガックリする。
「もう寝るわ」
まだ20時だけれど、ずっとため息をついている母と同じ部屋にいるのは非常に息が詰まって苦しかった。
学校、行きたくないな。