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君がため

第1章 生きる理由


死ぬ事が怖いなんて、思った事はない。
近藤さんの為なら、自分の命なんてこれっぽっちも惜しくねぇ。
だいたい、俺は人斬りだから。
散々人を斬っておいて、自分は長生きしてぇなんて、虫が良過ぎらぁ。
そう、思っていた。
…こいつに逢うまでは。

「」
名前を呼ぶと、答える代わりに細い腕が絡みついてきた。
背中が暖かくなる。
黒髪を撫で、小さな耳をそっと噛んでみる。
「や…ん」
漏れた声に、体温が上がる。
これから始まる時間が、自分にとってどれだけ大切か、否が応でも思い知る。
姉上、すいません。まだ当分そっちには行けそうにないでさぁ。
死ねる理由より、生きる理由が出来ちまったんでねぃ。
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