第1章 リクエストについて
「壁ドンしたい」
凪沙さんはいつも唐突だ。
「……茨が教えてくれた。壁ドンは女の子を追いつめる技だって。」
「それは本当に壁ドンなのですか」
出会った頃に比べて随分と仲良くなった。
仕事関係で度々会うけれど、会えば会うほどわからなくなる。
「ではやってみてください、私に」
「……いいの?」
「まだ時間はありますし。」
私が壁際に立つ。その瞬間、顔の横に凄まじい勢いで凪沙さんの手が延びて、パァン!と壁に手をつく音がした。
「…よくわかりました」
「ん?」
「それは壁ドンではありません。」