第2章 マリー様 七種茨
すっかり冷たくなったストレートの紅茶のペットボトルを片手に持った茨くんと私の影が道路に写っていた。
茨くんを駅まで送ろうと私が提案して、了承してもらったのだ。
「」
「何?」
「俺は……しつこいから、きっとまだお前を好きでいると思う」
隣を歩く茨くんの口調が変わった。………変わったと言うか、小さい頃と同じだから素に戻ったと言うべきなんだろうか。
「告白したんだから、多分……ていうか絶対遠慮しない」
「…………」
「俺に好きでいられるより俺を好きでいたいって言うなら、好きになってほしいし。」
茨くんはいたずらっ子のように笑っていた。
「……………………」
「何だよ?やっぱりこれじゃあ変か?」
「いや、何か…………茨くんが茨くんで安心した。」
「はぁ?」
眉をひそめる彼の顔は小さい頃と何も変わっていない。本当にそのまま大きくなったって感じ。
「正直、弓弦くんもそうなんだけど………変わっちゃったから私が知る皆が消えちゃったみたいで悲しかったんだよね。でも私の知る皆は、根っこのところでまだ生きてたんだなって。」
「………ったく、また下らないことで悩んで。」
茨くんは拗ねたみたいに吐き捨てた。弓弦くんの話をするとこうなるところ、変わってない。
「俺はどこまでいってもくそ野郎ですよ!」
それが何より誇らしいように彼は言う。私は笑ってそれに答えた。
あぁ、これが私の新しい人生の一つに加わる思い出になる。
君は、幸せを私にくれる人。
恋とかはまだわからないけど、私はそんなくそ野郎がどこまでも大好きだ。
まだまだ明るい午後の日に。
私は新しいことを一つ覚えた。
もしも新たに芽生えたものが恋なら、それはきっと…………
私が茨くんにあげられる、たった一つの幸せになるんだろう。