第5章 3.5.部室にて
困ってる女子生徒がいれば手を差し伸べとるのを見かけたことが何度かあったし、男子生徒の場合は彼女自身が耐えきれる範囲でどうにかしようと頑張っとった。
だが大概は無理やった様で彼女の友人が手助けしとるのを見たこともある。
見目麗しく成績も悪くなく、人柄もええなんて何処の漫画の世界の人間やろうなと思った事がある。
謙也にポロッとその事をこぼしたら『お前も似たようなもんやろ』なんて返されて驚いた事もあったなそう言えばと昔を懐かしむ。
「…白石?」
目の前に座っとる小石川に話しかけられて、ふと我に返る。
ペンも動かさんと微動だにしとる俺に気が付いて声をかけてくれたんやろう。
「あぁ、すまん。何書こうかと思ってな」
「今日書くこと多いもんな」
小石川が苦笑する。
確かに書こうと思うと書くことが多すぎて部誌の狭い部分に書ききるのは大変そうやなと俺も苦笑した。
「んなもん、適当でええんやないか?」
俺の後ろから部誌を覗き込むように謙也が話しかける。
しらん間に着替え終わっとった様でウェアではなく既に制服姿やった。
相変わらずやろうと決めた事に対しては早いなと感心する。
「そういうわけにはいかんやろ」
「白石は真面目やなぁ」
「いやいや、部誌は一応ちゃんと書けよ」
謙也に対して小石川が突っ込みをいれるとすかさずロッカーの前でまだ着替えながら財前も突っ込みをいれた。
「謙也さんの部誌、適当っすもんね」
「何やと!」
「あぁー…はよ帰りたい時とかは最高に適当やな」
「せやな」
「…せやなぁ。確かに謙也はん、たまにそういう時がありますな」
謙也が財前に反論するが、小春とユウジ、更には銀にまで同様の事を言われてしまい意気消沈してしまう。
流石に全員から突っ込まれるのは可哀相やなと内心、若干の同情をした。
何かフォローでも入れようかと口を開こうとしたが、先に謙也の方が言葉を発した。