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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


「流石に【名前】はこのテニス部に選手として入部は無理やで」

私がそんな事を考えていると、白石くんと金太郎くんの会話が目の前で続いていく。

「そうなんかぁ…。折角久しぶりに会うたし色々話したいと思ったんやけど…」
「金太郎くん…」

残念そうに、そしてどこか寂しそうに金太郎くんが呟く。
なんだか悪いことをしてしまっているようで、私まで少し落ち込んでしまう。
でも流石にどうしようもしてあげられなかった。

「でもな、マネージャーなら別やで」
「え?」

すると白石くんは驚く事をいう。
私は驚いて白石くんを見ると、彼と目が合う。
私を見て白石くんは微笑んだ。

「実はな俺らもそろそろ下級生ばっかに事務的なの任せきりなの良くないな思っとってな。【名前】が良ければやけど」

白石くんの話によると、彼らが1年生の時にはこのテニス部には3年生の女性のマネージャーがいたらしい。
完璧に仕事をこなせる人で、テキパキと部の事務的な事を担っていた人だった。

だが彼女があまりに完璧過ぎてそれについていける後輩が彼女の在学中に現れなかった事。
そして彼女が卒業した去年にマネージャーの募集はしていた。
それに対して何人も希望者がいたのに数日で辞めていってしまう事が続き、ついにはそれらの対応をすることの方が大変になってしまい募集自体を辞めてしまっていた様だった。

今年もどうするか悩んだが去年の二の舞になることは阻止したかった様で自薦の募集はやめたらしい。
部内の人間の推薦なら話は別と白石くんは私達に説明をした。

「なぁなぁ。マネージャーっちゅうのになったら【名前】と部活出来るん?」
「せやな。流石に四六時中一緒は無理やけど、部活動の最中に会う事ぐらいは出来ると思うで?」

白石くんの話を聞いて、金太郎くんはキラキラと目を輝かせる。
先程までの落ち込みは嘘のようで、今は私の知っている元気いっぱいでキラキラとした表情の金太郎くんがいた。
そして私は彼の次に放つ言葉に驚いてしまう。

「じゃあ【名前】!ワイと一緒にテニス部入ろうや!」

金太郎くんの言葉に対して私はいいとも悪いとも言えずに、ただただテニスコートの傍らで立ち尽くしてしまうのであった。


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