第11章 9.合宿03
「それはオサムちゃんがええこと言ったせいやで?それでむず痒いんちゃう?」
「こら、白石!俺はいつもええこと言うやろ」
俺の返しにオサムちゃんがポーズだけ怒ってみせたので先程までの何とも言えへん空気がガラリと変わる。
さっきまでの空気のままやと苦手な空間やなと思っとったので俺はこっそり安堵のため息を漏らす。
俺も彼女とまでは行かへんけど恋とか愛とかそういった類の事が苦手やと思う事はたくさん今まであった。
せやから自分と少しだけ似とる境遇の彼女に興味を持ったのが…最初やったと思う。多分。
でも今はなんだかそれだけやない気がしとる。
多分自分の中でも忘れてる事がある気がしてきとった。
でも今は何だかその事が思い出せず、俺はモヤモヤとする感情が自身の中で広がってくのを感じとった。
「おーい、白石ー?」
「え、あ、何?オサムちゃん」
いつの間にか考え込んどった様で俺の横で俺の視界の前に手を振って見せとったオサムちゃんの手が視界に鮮明に映ると俺は驚いて顔をあげる。
正気に戻った俺を見て『そろそろ帰るで』とオサムちゃんが告げるから『あ、あぁ、せやな』と慌てて俺は持っとったノートを閉じて元の場所へと置く。
「おやすみ、【名前】」
静かに眠る彼女にそう告げて俺らは部屋を出る。
部屋から出ると、ふと――きっと彼女のことやから、明日起きたら必死に謝る姿を思い描いてしまい、自然に俺の口角があがるのがわかる。
いつも一生懸命頑張ってる姿を知っとるから、誰も咎める事なんてあらへんのにきっと会う人会う人に一生懸命に謝罪するんやろうなと思うと笑い出しそうになってまう。
こんなんオサムちゃんに気付かれたら、また変な風に言われると思うと俺は必死に平静を装いながら自室へと向かいながら、このドタバタとした合宿も明日になれば終わると思うと寂しいな…と俺は思ったのやった。
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