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ゆるやかな速度で

第3章 2.不思議な人


ピンポーンと軽快な音が部屋に響く。
するとソワソワとしていた遥斗がガタンっと勢いよく立ち上がったせいで、膝をテーブルにぶつける。

「いたっ?!!」
「だ、大丈夫?遥斗?」
「平気!玄関に先行ってるわ!!」

そう告げて遥斗は居間を飛び出していった。
そんな遥斗を見て私はクスクスと笑ってしまう。
そして、白石くんにお願いして良かったなと思った。

先日、図書室で白石くんに遥斗にテニス教えようか?と話しかけられてからの週末。
今日は彼がわざわざ家を訪ねてきてくれたのだった。

私が悩みに悩み抜いて白石くんに連絡してからの返事はすぐだった。
丁度携帯を見たタイミングだったようで『俺で良ければ喜んで』とシンプルな返事に私がホッとしたのは数日前の事だ。
あの日から何回か打ち合わせで連絡を取り合っていたが、お互いにあまりキラキラとした文章は得意ではないようでシンプルな文章の応酬だった。
私のあの味気ない文章でも気にしないでくれた白石くんに私は安堵していた。

それと直接話すよりもメールの文面の方が緊張しないという事実も判明出来たので良かった。
その事を察してくれたのかクラスではあれから特に話をしていない。
メールのやり取りが無かったら、あの図書室での出来事も白昼夢だったのでは?と自身を疑う所だった。
それぐらい私と白石くんはあれから特に直接的に会話はしていなかった。
変わろうと意気込んではみたけど、直接話すという事にはまだ踏み出せずにいる自身に私は自己嫌悪が徐々に膨らみつつあった。

「姉ちゃーん!!早くー!」

玄関の方から聞こえる遥斗の声にふと我に返る。
遥斗が呼んでいるという事は宅配便とかではなく、本当に白石くんが来てくれたのだろう。
私も慌てて玄関へと向かったのだった。

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