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第4章 浮かんでくるのは君の顔


翌日、新幹線で新横浜の駅に着いたのはお昼の12時半頃だった。今日はもう練習の予定もなく、部員たちは駅で解散となる。大体の荷物は先に帰った応援団に搬出してもらったから、私は割と身軽に帰ってくることができた。遠征してくれたみんなには本当に感謝しかない。


二年生達が「先輩昼メシ行きましょう」なんて誘ってくれたけど、どうにもそんな気分にもなれなくて、申し訳なく断りを入れて家を目指す。斉藤くんは引率の先生と何やら話し込んでいたけれど笑顔も見せていたのでホッと一安心した。昨日も宿舎に戻ってからは荷物整理や帰りのスケジュール確認などでバタバタしていて落ち着かない様子だったけれど、その忙しさが少しでも斉藤くんの気持ちを紛れさせてくれればいいな、と願った。


*・゜゜・*:.。..。.:*・*:゜・*:.。. .。.:*・゜


家に無事到着し、荷物を自分の部屋に置いてジャージを脱ぐ。三年間着させて貰った「SHOYO」と背中に刻み込まれたジャージ。それを脱いだ瞬間に、急に込み上げてくるものがあって。


――――――私は気付いたら制服に着替えて、自転車に乗っていた。


無我夢中で自転車をこぎ、辿り着いたのはいつもの学校の体育館。こんなところに来てどうしようというのだろう。きっと鍵も開いていないだろうな…と思いながら入口のドアに手を掛けると、鍵は思いもよらず開いていた。ギイッと重い鉄のドアに力を入れて動かすと、中からはボールのドリブル音が規則的に綺麗な音で鳴り響いている。


斉藤くん、だった。


先ほど駅で解散した時のジャージ姿のままで、ドリブルをしてゴール下シュートを綺麗に決める。ゴールから滑り落ちたボールをキャッチしてもう一度飛ぶと―――――――――ちょうど私が三年前に見た試合と同じように、ゴールに叩きつけた。


私が一瞬で恋に落ちた、ダンクシュートだ。


斉藤くんの肩は上下していて。このハイペースでずっとシュートを打ち続けていたことが一目で分かる。らしくもない無茶なやり方に、自然と涙が込み上げてくる。


「…………月丘。来てたのか」
「…うん。斉藤くんお疲れさま」

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