第30章 吐息の味
圧倒的な力の差で、
チンピラ共はあっという間に地面に転がった。
コト
「……雫……」
血生臭くなった蔵の中に、
僕たちはまだいる。
雫
「…びっくりしたよね…」
僕はコトに背を向けたまま。
コト
「…うん、そりゃあね………
だけど……この子も…私も…それに………」
蔵の外の村はガヤガヤと賑やかだ。
恐らく犠牲が数人のうちに蔵にチンピラが集まって来たからだろう…
雫
「…子にも怪我はない?…」
コト
「うん!ないよ!元気だよ!!
…こんな時なのに変ね…スヤスヤ寝てる…」
雫
「…良かった…」
(正体がバレた以上…もう居られない……)
僕は赤子の無事を確認すると、
蔵の外に出るべく出口に向かう…
コト
「待って!!…何処に行くの!?」
雫
「……僕の在るべき場所に帰る……」
コト
「在るべき場所!??
雫の在るべき場所って此処でしょ!!!
私と…この子と一緒の…此処でしょ!?」
雫
「…嬉しいや…そんな事言ってもらえるなんて……」
コト
「雫が妖怪だって…私構わない!!
私…私……雫が好き!!お願い行かないで!!」
雫
「…………」