第4章 新世界への前奏曲
収録を終え、楽屋を出たIDORiSH7のメンバー達は、こけら落としの話で盛り上がっていた。そんななか、慌ててやってきた千から声が掛かる。
「……あ、いた。大和くん!ちょっと話があるんだけど、この後時間ない?」
千の提案に、大和はしばらく間を置いてから、口を開いた。
「いや、忙しいんで」
「「「「えええええ!?」」」」
「お話してきたらいいじゃないですか!あんなにお世話になったのに!」
「そうですよ!時間なら大丈夫ですよ!」
「向こうが忙しいっしょ。話なんて、ただの社交辞令だって。――先輩、それじゃ、お先に」
「ちょ、ちょっと大和さん!?」
さっさと行ってしまった大和。紡が千に向かって全力で頭を下げる。
すると、千の後方から着替えを済ませた百と零が向かってきた。
「あ!百さんと零さん!今日はありがとうございました!またよろしくお願いします!」
「はいはい、よろしくー!お疲れさま!」
『お疲れ様!』
「零さん、今日は事務所に戻られますか?」
『うん、百と千ちゃんとご飯行ったら帰りまーす!』
「了解です!お気をつけて!それでは……っ」
大和に続いて慌てて帰っていく紡たちの背中を見送ってから、千からぼそり、と溢した。
「……振られちゃったか。大っきくなったな。初めて会った時は学生服だったのに」
「おお。ブレザー?」
「学ラン学ラン」
『それ関係ある?学生時代の大和くん、どんなだったの?』
「……人間不信の塊で、芸能人はゴキブリ以下って目をしてた」
千が遠い目で語る。
三人は、彼らの背中が見えなくなるまでそこに立ち尽くしていた。