第6章 声を聞かせて
「ふんふんふ~ん。ユキー、お菓子貰ってきたー!」
鼻歌を歌いながら、百が楽屋のドアに手をかけた、時だった。
室内から、誰かと話す千の声が聞こえてくる。どうやら、誰かと電話しているようだ。
「……ああ、そうだ。どうしても見つからないのか。あいつの行方は……。何をしてもいい。いくら使っても構わないから、どうか、探してくれ。五周年コンサートまでに――。」
千の言葉に、百は開きかけていた扉を静かに閉めた。
そして、扉に寄りかかりはあ、と小さく息を吐く。
「………。ああ、そうか……。……約束の期限だもんなぁ……」
百の掠れた声が、静かな廊下にそっと浮かんで儚く消えた。