第2章 前進
キュッ キュッ
ダンッ
ドスン
ピーーーーーッ!!
カーテンがきっちりと閉められた暗闇の部屋、真ん中にぽつんと置かれたテレビからは録画再生であろう”ある日”のバレーの試合が流されていた
「なんて事でしょうか!最終セットのマッチポイント!世界ユース日本女子の小さな女王が痛恨のミスでしょうか?!綺麗にあげられたトスを見送ってしまいました!」
世界ユース女子 優勝決定戦
日本 対 イタリア
「日本惜しくもここで敗退、優勝は イタリアーーーー!!!」
画面には敗退した泣き崩れる日本の世界女子ユースのメンバー、そこに一人だけ小さな選手がぽつんと立ち尽くしていた
チーンチーン
仏壇に置いてある鈴が部屋に鳴り響き、微かなお線香の香りが漂う
部屋の角に置かれた等身大の鏡の前には、乱雑に切られた髪が散らばっていて、その横には少し埃のかぶった何ヶ月か前のスポーツ新聞が置いてあった
新聞には、世界ユース日本女子 惜しくも準優勝!!女王、最後、なぜ飛ばなかったのか?期待の女王 怪我のため引退か?!と一面に書かれていた
「ふぅ.......よしっ、行ってきます」
仏壇に立て掛けてある 満面の笑みを浮かべた男女の写真に向かって手を合わせれば、一息つき重い腰を上げ、ゆっくりと部屋から出て行く
後ろ姿は小さな少年にも見えるが、その顔は凛とした女性の綺麗な顔立ちで、少し寂しそうな目をする少女だった