第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
【MASAKI】
まさかの『ふたりっきり』空間に、なんか俺、テンパっちゃってさ~…
ひとりでペラペラ話してしまった。
なんていうのか。
沈黙が、怖くて…
この人と居てもつまんなぁ~い!とか、
気の利いたお喋りのひとつも出来ない、能無し…とか。
そんな風に思われたくないから…
でもね。
最初に会った時より、智くん、ちゃんと俺のこと見てくれる…っていうか。
目が合う回数が数段に増えた。
これって、気のせいじゃないよね~?
少しかもしれないけど、
俺、智くんに近付けてる…よね?
↑もうこの発言自体、恋する乙女なの…本人は気付いてないから、始末に悪い…
「ねえ、智くんてさ、お休みの日は何してんの~?」
「えっ?」
「あ、いや、その…嫌なら答えなくていいんだけど、どんな事に興味があるのかな~?とか、共通の趣味とかあったら、何ていうか、素敵だな~、とか思って」
↑もはや、お見合い…
「俺は、絵を描いてるかな~…」
「えっ??」
「そう、絵」
「あ、絵ね~!凄いね!!」
別に凄くなんかないよ~と言いながらも、智くんは、アクリル絵の具で描いてるとか、実は美容院にも一枚飾ってあるんだとか…
ビックリするくらい、饒舌に語ってくれた。
俺はもう、分かんない単語満載だったけど、
へえ~、とか、ふ~んとか。
感心しながら聞いていた。
「今は、50号のキャンバスに、海の絵を描いてるんだ…」
「その海の絵、見たいな~」
「え?」
「出来上がったら、見せてよ~、智くんの描く海の絵…」
「…いいけど…」
やったぁ~!!って、俺がガッツポーズで大喜びしたら、智くんは、少し困ったような、照れたような顔をしていたけど、
「ちょっと、トイレ行ってくる…」
そう言って、部屋を出て行ってしまった。
でも…
これって、気のせいじゃない…よね?
智くん、俺のこと嫌いじゃない…だよね?