第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
智くんは……
どう思ったんだろ?
あの時は、少し離れて見ているだけで、彼は入ってこなかったから…
それに最後は途中で出ていっちゃったし。
俺、怒らせちゃったのかな?
だとしたら、謝んないと!
俺は、『アクアマリン』に予約を入れ、シャンプーを智くんに指名した。
もし、怒ってるんならちゃんと謝って。
そんで、彼とゆっくり話してみたい。
興味が…なんていうと、とんでもなく誤解されそうだから、言葉のチョイスが違うんだろうけど…
何というか、不思議な魅力に引き付けられる。
彼が『ゲイ』だからなのか?
初めてそう言う世界の人に会った、って訳でもない。
なんなら、そういう人は、この業界には少なくない。
誘いを受け、丁重にお断りしたのは、
去年やったドラマの共演者だった…
自分でも分からないけど…
分からないからこそ。
智くんと話してみたいんだ。
彼の持つ雰囲気にめちゃめちゃ魅かれる…
俺を見ようともしないのは、何でか?
彼のふわふわの髪と、少しクールな横顔を思い出しながら、俺はゆっくり目を閉じた…
智くんと会ったら、何話そうかな~…
一瞬だけ見た、彼の綺麗な指は
どんなふうに俺の髪を洗ってくれるのかな?
楽しみだな~…
…明日…アクアマリンに行くの…
……さとし…くんに…会える…の…
その夜、俺は夢を見た…
妙にリアルな、あり得ない夢…
深夜、ひとりで『アクアマリン』に行くと、
店の中には人の気配が無くて…
「予約、入れたはずなのになぁ…翔ちゃ~ん?」
店内をキョロキョロしながら奥に入っていくと、
俺がいつも使っている個室から、声が…
「…アァ…ゃっ…しょう…さん…」
えっ!?
嘘…!!
この声は……もしかして…