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潜入捜査はキツイって、皆さん分かって下さいよ

第3章 犯人確保!


遊女に混じって張り見世に出る。
格子の隙間からそそがれる、品定めする男達の視線。
私は小さく息を吐く。
被害にあった遊女達は、そろって青系の着物を着ていて、少しつり目だった。
私も一応はそんな仕様になってはいるが。
犯人に選ばれなければ意味は無い。
格子の向こうの男達から感じるのは、ただの緩みきった下心だけ。
1人、また1人と、指名を受けた遊女達が部屋を出て行く。
あの遊女達を選んだ客が、犯人でないことを願うばかりだ。
ふと、私の鼻がある匂いを嗅いだ。
格子の外に立つ、1人の男と目が合う。
これは…。
私は男と目を合わせたまま格子へ近づき、出来るだけ色っぽく微笑んだ。

私が男に選ばれたことは、月詠さんが真選組に伝えに行った。
「本当にあの客なのかい?」
心もち青ざめた遣り手に頷く。
「さっき近づいた時に、薬の匂いがしました。間違いありません」
「そうかい…。くれぐれも、気をつけて」
「はい」
私は深呼吸をひとつして、男の待つ部屋へと向かう。
「ようこそ、おいでくんなまし」
三つ指をつく。
付け焼き刃の郭作法がバレないか気がかりだったが、男は笑って私を手招いた。
「挨拶なんて良いから、近くへ来い」
大丈夫。襖1枚向こうの部屋には、山崎さん達がいる。
私は微笑みを浮かべ、男に近づく。
腕を掴まれ、膝の上に座らされる。
短くて太い指が、私の尻を撫でる。
気持ち悪い…。ぶん殴りたい気持ちを必死に抑える私に、男は下卑た笑いを浮かべる。
頬を撫でるなぁ!
「タバコ、吸っていいか」
男はそう言って、やたら大きなボストンバッグからタバコとライターを取り出した。
キター!あ、火付けてあげるんだよね。
男が分厚い唇にくわえたタバコに、緊張を隠して火を付けた。
「ふーっ」
男はわざと私の顔に煙を吐いた。
腐った果物のような、嫌な甘さの匂い…痺れ薬だ。
私は男を突き飛ばし、大声をあげた。
「皆さん!今です!」
襖がパンッと音をたてて開き、沖田さんを筆頭に、隊員達がなだれ込む。
「控えろ!真選組だ!」
慌てて逃げようとする男は、たちまち押さえつけられる。
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