ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第10章 出発の夏
彼が居なくなって1年半の月日が過ぎた
私はすっかり26歳の立派とは言い難い大人に成ったがそんな大人が異世界へ行きたいと土下座をしている
そして遂に
「……元気に帰って来いよ……」
父からの許しが出た
その影には母の説得があった事は明らかで今私の実家では送別会が開催されている
山程ある私の好物を家族で囲み楽しく食事を済ませた
涙を流す母ときつく抱き締め会って私も思わず泣いてしまった
「沙夜子、絶対帰って来るんやで。絶対イルミ君と会うんやで!」
「………ありがとう。……ありがとう。」
夕焼けの道を手を振りながら行く
暑さに泣いているのか煩いセミの声を何処か遠くに聞きながら
何度も何度も振り返って家族の姿を焼き付けた
きっと帰って来る。平気だと話した私だが本当は不安で仕方なかった
ハンターハンターを一巻から読破して私の様な凡人が生きていられる気は全くしなかった
しかし私は行くのだ
彼に会いに
大体物語はハンターのライセンスを持つ危険な仕事をする人達が主人公な訳だし私には無縁だと考える事でのみ不安は僅かに和らいだ
大きなリュックサックに親方のケージを乗せてしっかりとくくりつける
無意味な保険証何かが入った小さなポシェットを掛けて私は新幹線に乗り込んだ