第40章 帰る場所-キュウサイ-
「おじい様!?」
大勢の警察官を引き連れ現れたのは、現日本国で警視総監長を務める祖父だった。
「詩遠!!」
「隼人…!?」
その中には隼人もいて、私は思わず泣きそうになるのをどうにか堪える。
「うちの孫娘を危険に晒した愚か者は君かね?」
「………………」
「おっと。動かんでくれ。別に儂らは君を撃ち殺しに来た訳ではない。ただ一歩でも動いたら…全員で君を取り押さえるがね」
「詩遠、まさかお前が僕を裏切るとはな…」
「長谷君…」
「残念だよ」
悲しげに笑んだ長谷君はシャンデリアに狙いを定めていた銃を下ろす。
「詩遠…!!」
走り寄って来た隼人が私をきつく抱きしめる。
「……隼人?」
「良かった…っ、良かっ……っ」
それは確かに覚えのある体温と声だった。
「…隼人…?本物…?」
「そうだよ、俺だよ」
その声に、堪えていた涙が溢れた。
「ふっ、うぅぅ…」
あの強くてあたたかな腕の中に
私はちゃんとまた───戻ったのだ。
「…私…ちゃんと…生きてる?」
「少なくとも足はついてるし体温も感触もあるよ」
「隼人……っ」
彼に会いたくて。触れたくて。生きてるっていう感触が欲しくて…私は涙を溢れさせたまま、彼に抱きついた。
「詩遠……」
強い腕に抱き込まれ、ほんの少し痛かった。でもそれが、ちゃんと生きている証に思えてまた嬉しさが込み上げてくる。
「…生きてるよ。大丈夫」
「っぅ……っ、ありがと…来てくれて…っ」
「助けるって言ったろ?俺は約束は守る男だ」
「…うん、そうだよね」
彼がここに駆け付けたということは…
「隠さんの事件は終わったよ。だから急いでお前の所に駆け付けたんだ。良かったよ…お前が向こうに帰ってなくて…本当に良かった」
彼の優しさにまた涙が溢れる。
「もう大丈夫だ」
「…うん…っ」
「ここから先は、俺の番だ。
何があってもお前を守るよ」
「は、や……っ」
名を呼ぼうとして、涙で無様にむせてしまう。私の横で、動かなくなったクロエがいる。その表情は気のせいか、悲しそうに見えた。
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