第2章 新しい居場所-フクロウ-
「あ、そうだ。ウエノの近くに美味しいパスタのお店があるんだ。一緒にどう?」
「行きません」
「じゃあギンザに出来たカフェに行こう。君の好きそうなスイーツがあるんだ」
「先生、しつこいです」
「だって君、なかなか僕になびいてくれないじゃないか。こんなに猛アプローチしてるのに反応は塩対応で素っ気ないし」
「塩対応で素っ気ないのは紫鶴さんのその性格のせいです。そもそも私を甘いもので釣ろうなんて百年早いんですよ」
「あははは!」
「!尾崎さん…?」
急に爆笑した尾崎さんに首を傾げる。
「いやだって…ぐいぐい攻める紫鶴さんの誘い文句をあんなに嫌そうな顔で断る女性がいるんだなと思ってさ」
「酷いな隼人。僕は本気で彼女を口説き落としてるんだよ。さっきだってお茶の誘いを軽蔑するような眼差しで見られて落ち込んでるんだ。辛辣なお嬢さんをどうしたらお茶に誘えるのか、考え中なんだよ」
「もう諦めてくれませんか」
「じゃあ誘いを受けてくれるかい?」
「…先生、しつこいと申し上げました」
「本当につれないなぁ」
「何度口説かれようが、お茶に誘われようが、私は絶対に行きませんよ」
「これは手厳しいね。じゃあお姫様は?」
「!」
「僕とお茶でもしない?」
「あいにく仕事が忙しいもので」
「久世さんにまで断られましたね」
「うちの新人は二人揃って手強いってことだ」
朱鷺宮さんは面白そうに笑んだ。
「おい紫鶴さん、彼女も仕事をするためにここへ来たんだからな?」
「知ってるよ?でもその仕事の時間以外をどう使おうと彼女の自由だ。束縛する権利は君にはないだろ?」
「まぁな」
「明日が楽しみだなぁ、君の制服姿」
「そういえばフクロウの制服って素敵ですね。私、学生の頃はブレザーだったので、こっちでセーラー服を着られたのが嬉しかったんです」
話が盛り上がるにつれて気が緩んでいたんだと思う。みんな良い人ばかりだから緊張感が緩んでたに違いない。
だからついうっかり、口を滑らせた。それに気付いたのは、みんなが訝しげに私を見ていたからだ。
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