第15章 恋文-ﾔｸｿｸ-

『貴女の秘密を知っている。』



最初に飛び込んできた文章に、表情が固まる。



「え……？」



『貴女にもう一度お会いしたい』



続けて、そう書かれていた。



「な……っ」



不安から思わず廊下に飛び出したものの、誰に相談すべきか、私は考えてしまう。



真っ先に浮かんだのは、何故か滉の顔だった。



「(でも…迷惑を掛けるのは…)」



黒い羽根が脳裏を過る。



「(駄目だ…もう、私独りじゃ…)」



私はそのまま階段を駆け下りる。



✤　✤　✤


「……？血相変えてどうしたんだよ」



運良く、部屋から出てきた彼と目が合う。



「滉、これ…！！」



私は黒い羽根ごと、手紙を差し出す。最初に書かれた文章など、気にも留めずに。



「！？」



「これって…やっぱり…」



滉は睨むような眼差しで、羽根や便箋、封筒を調べている。



「差出人は名前はなしか。
…まぁ、この羽根で十分だけどな」



「……………」



「この…『貴女の秘密を知っている』ってどういう意味だ？」



「っ、さ…さぁ。心当たりがないの」



咄嗟に誤魔化したが、忘れていた。



「(秘密を知ってるって…どれのことを言ってるの？違う世界から来たこと？それとも彼との秘密？そうじゃなければ、後は……。)」



「取り敢えず、朱鷺宮さんに相談に行こう。まだ作戦室にいるだろ」



私達はその手紙を持って朱鷺宮さんを訪ねた。



「これはまた厄介な恋文だな」



朱鷺宮さんは黒い羽根と便箋を机に放り出し、大きな溜息をついた。



「一応改めて聞くが、この間、滉と潜入した時に何かおかしなことはなかったか？」



「…ないと思います。すすめられた飲み物を断りはしましたが…」



「その後に、一緒に貴賓室の辺りを見て回った時にも誰にも会っていません。…少なくとも、気付く範囲では」



「やはり立花狙いなのか。…その珍しい瞳の色に惹かれたか、それとも警視総監の孫という部分に惹かれたか、だな」



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