第1章 ふりかえり。
これからの未来はきっと、素晴らしいものに違いない。
そう思い、期待し、先へ進もうとするのに、気づけばその足は後ろを向いている。
だって目の前には何もないから。
真っ暗で、いくら良い想像をしようとしても不安が大きくなってしまうから。
後ろを向くほうがずっと良い。
そこには過去があるから。
僕が歩いてきた、出来上がった道があるから。
でも、その過去の自分も、僕の心を休ませてはくれない。
そこにいるのは僕だから、嫌でもわかってしまう。
今の自分は、過去より劣っていると。
未来へ進むにつれて、勝手に良くなっていくものだと思ってた。
勝手に大人になって、勝手に良い人生になっていくと思ってた。
だけど違った。
そんなのはただの妄想だった。
何度も振り返り、過去の自分に嫉妬する。
過去の自分に嫉妬して、今の自分が嫌になる。
とてもじゃないけれど、未来なんて見ていられないくらい。
慰めが欲しくて振り返るのに、追い詰められてしまう。
未来に向けていた足は、いつの間にか後ろへ。
未来には背を向け、その場に留まるようになる。
いつの日か過去すら見れなくなって、その場に屈むようになる。
過去の自分よ、はやく、はやく僕に追いついてくれ。
そして手を引いてくれ。
僕はここにいるから。
お前が来るまでここから動かないから。
動けないから。