第5章 欲
なぜだろう。
僕が一人だったとき、誰でもいいから側にいてほしいと願っていた。
そして、君が、救ってくれた。
君との時間が増えたとき、君に側にいてほしいと願っていた。
幸せだった。
満たされていた。
でも、なぜだろう。
今は満たされない。
心に、穴が空いたような。
なぜだろう。
わからないけど、満たされない。
握られていた手が、急に離されたような。
向けられていた笑顔が、急に背を向けられたような。
あぁ、僕はきっと欲深くなったんだ。
そうだ。最初は誰でもいいとすら思っていたのに。
いつから"君"じゃなきゃダメになったんだろう。
もう、戻ってきてはくれないのだろうか。