第21章 扇月の夜(今川義元)
数日後、義元は謙信に呼び出されていた。
義元「珍しいね。謙信が俺に用事なんて」
謙信「お前。俺の呼び出しに、
遅れてくるとはいい度胸だな」
義元「だって俺はお飾り当主だし、
謙信の用事ってどうせ鍛錬でしょ。
正直遠慮したいなって」
謙信「ほう?
・・・いっておくが鍛錬ではない」
義元「へえ?それこそ珍しいね?何?」
謙信「今度、俺の部下の軒猿に、
一人女が増えることになった」
義元「女嫌いの謙信がどういう風の吹き回し?
女抜きにするぐらい強い子なの?」
謙信「どうだろうな。
筋はいいだろうがまだこれからだ」
義元「ふーん。
で俺にそれ告げてなんかあるの?」
謙信「刀の扱いはいいが、
あれは男の経験がないらしい」
義元「生娘ってことかな?」
謙信「ああ・・・しかし軒猿として生きるなら、
そちらの知識に乏しいのは、
致命的だと判断した」
義元「それで俺にどうしろと?」
義元は謙信に問う。