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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第10章 【許されざる呪文】


「おやおや、英雄のハリー・ポッターじゃないか。どうしたんだい?頭に付いた馬鹿な傷跡があっても、許可証が無いからホグズミードには行けなかったんじゃないのかな?それとも、ディメンターが怖くて初めからサインを断ったのかい?」

 ドラコの嫌みったらしい口調で、クリスの怒りは頂点に達しようとしていた。思わず杖を取り出そうとしたクリスの腕をハーマイオニーが掴むと、グイグイと引っ張ってその場から離れた。そして人ごみに紛れてクリスに耳打ちした。

「いい?クリス、今日は何も言わずマルフォイと一緒にホグズミードに行きなさい」
「正気か?何で私があんな腐れ外道と!」
「いいから!私の言う事を聞いて。別にマルフォイの機嫌を取れと言っているんじゃないの。ただ、2人きりで、いつも通り、普通にしていればいいのよ。そうすればハグリッドの首もつながるわ」
「……なんかそれ、1年生の時もやらなかったか?」

 1年生の時、ハグリッドが禁止されているドラゴンの卵を孵化させた所為で、クリスは口止めとしてドラコのご機嫌取りをやらされる羽目になったが、ドラコの我儘に耐え切れず、半日ともたずにクリスがキレたのだった。

「あれは無理に機嫌を取ろうとしたから失敗したのよ。今回は普通にしていれば良いだけよ?分かったわね」
「あー……まあ、それでハグリッドの為になるなら……」

 本当は嫌々だったが、ハグリッドが元気になってまた楽しい授業をしてくれるのを願い、ハーマイオニーの提案に賛成した。

「良い?2人っきりで普通に過ごすだけよ」
「分かった――ドラコ!」

 クリスは2、3メートル先でハリーとロンと火花を散らしあうドラコに声をかけた。

「分かった、今回はお前と一緒に行くよ。ただし、グラップやゴイル、ましてやパンジーなんて連れてきたらすぐに帰るからな」
「良いさ、それじゃあ行こう」

 ドラコはにんまりと笑った。それを見ていたロンは、やはり1年生の時を思い出してこっそりハーマイオニーに囁いた。

「あれで大丈夫なのかよ」
「良いのよ。本っ当、男の子って単純で鈍感なんだから」
「それ、僕らへの嫌味も含んでる?」
「さあね?ほら、私たちも行くわよ」

 キビキビ歩くハーマイオニーに連れられるように、ロン達もハリーに見送られながらホグズミードへと出発した。
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