第34章 【新たなる出会い】
キングズクロス駅まで、何もなく穏やかな旅が続いた。クリスにとって問題はこれからだった。列車がホームに着くと、迎えの家族たちでいっぱいだった。ハリーの叔父さんと伯母さんでさえ迎えに来ていると言うのに、クリスの父の姿はどこにも無かった。
「はあ……、やっぱりこのままだとマルフォイ家直行かな?」
「えっ?クリスのお父さん来ていないの?」
「まあ毎年の事だからな。――しかし、本当に父親らしさって言うものにかけた人だよ」
「何だったら、僕ん家が送っていこうか?」
「いいよ。それにほら、お迎えがやって来た」
ため息とともに、クリスはこっちにやって来るドラコを指さした。人ごみに流されながらも必死になってこちらに来ようとしている。またいらぬ喧嘩にならぬうちに、クリスはハリー、ロン、ハーマイオニーに別れを告げた。
「それじゃあ、また2か月後に」
「クリス……本当に来ないの?4年に1度のワールド・カップなんだぜ?」
「いいか?最後にもう1度言うぞ?私は、クィディッチが、大っっっ嫌いだ!分かったら二度と口にするな」
「はいはい、分かりましたよ。ちぇっ、折角パパがチケットを用意してくれるって言ってるのに……」
ロンがぶつぶつ言っているのを無視して、クリスはドラコの方へ行った。ドラコの額は汗をかいていて、いつも眩しい額がより眩しく見える。
「ドラコ。おでこ、おでこ」
「ん?なんだいクリス?僕のおでこに何か付いているのかい?」
「そうじゃなくって、おでこ汗まみれだって」
そう言いながら、クリスは背伸びをしてハンカチでドラコの額を拭いてやった。全く手のかかる幼馴染だ。するとドラコは何故か顔を真っ赤にして、目を見開いている。
「どうした、ドラコ?」
「ななななんでもない!!」
まるでルーピン先生を前にしたクリスの様に、ドラコは真っ赤になったまま人ごみに紛れてどこかへ行ってしまった。クリスは頭に『?』マークを沢山浮かべながら、9と4/3番線をくぐり抜けて行った。これから起こる幼馴染と言う関係の、微妙な変化の始まりにも気づかずに――。