第28章 【シリウス・ブラック】
夕方、日が蔭り始めた頃4人はそろって夕食を取りに大広間に行った。
計画はこうだ。まず大広間で夕食を食べている姿を皆に確認させ、その後、玄関ホールの近くにある小部屋で、ハリーが隠し持っている『透明マント』を被り、生徒達が大広間から全員出たのを確認してから、こっそり城を抜け出すと言うものだ。
4人はなるべく普段と変わらない態度で夕食を取った。ハリーはローブの下に隠した『透明マント』のふくらみを隠すのに苦労していたが、その甲斐あって誰にもばれずにスムーズに小部屋まで移動することが出来た。
後は大広間から誰もいなくなるのを待つだけた。その間、クリス達はただじっと耐えなければならなかった。早くしないと処刑が始まってしまう。ヤキモキしながら最後の2人が大広間を出るのを見届けると、4人は『透明マント』を被って外に出た。
ハグリッドの小屋まで、忍び足で進んだ。そしてハリーが2、3回ノックをすると、ゆっくりと扉が開いた。ハグリッドはいったい誰が扉を叩いたのかと、辺りを見回した。
「ハグリッド、僕だよ、ハリーだよ。『透明マント』を着ているんだ、ねえ、中に入れてくれないかな?」
「……お前ぇさん、来ちゃならねえって言っただろうが」
そう言いながらも、ハグリッドは4人を中に入れてくれた。ハグリッドは泣いていなかったが、心ここに在らずと言った風で、これから何をして良いのかも分かっていない様だった。4人はかける言葉も見つからず、目配せしあった。
「そうだ、茶ぁ飲むか?」
「僕がやるよ」
「ハグリッド、バックビークはどうしたの?」
「アイツは、今外にいる。カボチャ畑に繋いでやった。自然に触れた方が良いだろうし、新鮮な空気も吸わせてやりてえ。そんで……その後に――」
ハグリッドはドカッと力なく椅子に座り込んだ。あまりにも衝撃が大きかったので、棚に置いてあったマグカップやミルク入れが床に落ちて粉々になった。
「私がやるわ」
ハーマイオニーは素早くしゃがみ込んで、かけらを拾い集めた。クリスもそれを手伝った。そうでもしていないと、この空気は重すぎて息も出来なかった。