第23章 【胸の棘】
小高い坂を上って来るのは、いつも通り腰ぎんちゃくのグラップとゴイルを連れたドラコだった。ドラコは初めクリスとロンの存在に気づかず、グラップとゴイルに話しながらこちら側に歩いて来た。
「――父上からのフクロウ便がそろそろ届いてもいい頃だ。あの馬鹿なデカブツがどうやって弁護するか聞いてみたかったなあ『こいつは何も悪くねぇですだ、本当ですだ――』なんてな。まともな弁護なんて出来る訳がないんだ。まともな脳みそを持ってないんだから――」
それを聞いて、グラップとゴイルは笑っていたが、本当に理解しているか定かではなかった。それよりも、その話を聞いていたクリスの方が胸糞悪くなった。クリスはドラコに話しかけた。
「おい、ドラコ!!」
「クリス!?、うして君がこんな所にいるんだい?それに――ウィーズリーも一緒か」
ドラコはその広いおでこに、青筋を立てていた。それを見て、クリスは「ケッ」と吐き捨てた。
「一緒で何が悪い?」
「悪いに決まってる、君は僕の許婚だ。それなのにウィーズリーと2人きりで――」
そこまで言われて、やっと気づいた。そうだ、ハリーは透明マントを着ているので、傍から見ればロンと2人きりに見えるのだ。クリスは面白くなってロンの腕に思いっきり抱きついて見せた。
「悪いが、あんな指輪、あってもなくても同じだ。私達はいまデート中なんでな。その阿保らしい顔を見せて邪魔しないでくれないか?」
「デ、デデデデデートだとぉ!!ウィーズリー、貴様分不相応って言葉を知らないらしいな」
「分不相応?どこがだよ」
ロンは少しムッとした顔でドラコを睨み返した。ドラコはそれを鼻で笑った。
「フンッ、教えてやるよ。聞いた話じゃ、貴様の家はこの『叫びの館』よりぼろいって言うじゃないか。やれやれ、さあおいでクリス。僕らと奴との身分の違いって言うものを教えてやろうじゃないか」
「誰がお前なんかと。例えボロイ屋敷でも、お前と結婚するくらいならこっちを選ぶね」
「クリス!いい加減にしないと――」
ベチャッ!――と、突然ドラコの後頭部に泥がぶつかり、ドラコは一歩前につんのめった。プラチナブロンドの髪から、ぽたぽたと泥がしたたり落ちている。ドラコは不思議そうに泥に手をやり、飛んできた方を見た。しかしそこには何もない。